「まだ元気だから、相続のことはもう少し先でいい」
そう考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、病気や事故など、将来何が起こるかを事前に予測することはできません。
元気なうちに財産や相続について整理しておくことは、ご自身の希望を残すだけでなく、残されたご家族の負担を減らすことにもつながります。
その中でも、代表的な生前対策の一つが**「遺言書」**です。
この記事では、遺言書について、
・遺言書を作成する意味
・自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
・法務局の遺言書保管制度
・公正証書遺言を作成する際の必要書類
・遺言書を作る前に考えておきたいポイント
遺言書は、亡くなった後の財産の処分などについて、自分の意思を残しておくためのものです。
法務省も、遺言書について「相続であなたの意思を実現させるため」に重要なものとして案内しています。
例えば、
「自宅は長男に相続してほしい」
「預貯金は子ども3人で分けてほしい」
「お世話になった人にも財産を残したい」
といった希望がある場合、遺言書によってその意思を残しておくことができます。
特に次のような場合には、遺言書を検討する意味があります。
もちろん、遺言書を作成したからといって、相続に関するすべての問題がなくなるわけではありません。
例えば、一定の相続人には「遺留分」という制度があります。
そのため、単に「財産を誰に渡すか」だけではなく、家族構成や財産の内容を踏まえて遺言の内容を考えることが重要です。
一般的に利用される遺言の方式として、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
大きく分けると、次のような違いがあります。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作成方法 | 原則として本人が作成 | 公証人が関与して作成 |
| 証人 | 原則不要 | 2名必要 |
| 保管 | 自宅など | 公証役場 |
| 法務局保管制度 | 利用できる | 利用しない |
| 検認 | 自宅保管の場合は必要 | 不要 |
| 費用 | 自分で作成する場合は基本的に不要 | 財産の価額に応じた手数料 |
| 専門家の関与 | 必須ではない | 公証人が関与 |
自筆証書遺言は比較的手軽に作成できる一方、形式や内容について十分に確認しておく必要があります。
一方、公正証書遺言は、公証人と証人2名が関与して作成します。
自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で作成する遺言です。
原則として、遺言書の本文、日付、氏名を本人が自書して作成します。
なお、財産目録については、一定の要件のもとで自書によらない方法で作成することも認められています。
自筆証書遺言の大きな特徴は、自分一人でも作成できることです。
そのため、公正証書遺言と比べると、費用や手続の面で利用しやすい方法といえます。
ただし、遺言書の方式を間違えてしまうと、せっかく作成した遺言が法律上の要件を満たさない可能性があります。
また、自宅で保管していた自筆証書遺言は、亡くなった後に家庭裁判所での「検認」が必要になります。
「自筆証書遺言を作りたいけれど、自宅で保管するのは少し不安」
このような場合に利用できるのが、自筆証書遺言書保管制度です。
これは、作成した自筆証書遺言を法務局に保管してもらう制度です。
法務局では、遺言書の原本を保管するほか、画像データとしても長期間保管しています。
主なメリットとして、
といった点があります。
法務局で自筆証書遺言を保管してもらう場合、保管申請手数料は1件3,900円です。
大阪法務局の案内でも、保管申請に必要なものとして、
などが案内されています。
なお、保管申請は遺言者本人が法務局へ出向いて行う必要があります。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。
遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人が内容を確認して公正証書として作成します。
作成時には、証人2名の立会いが必要です。
公正証書遺言の場合、原本は公証役場で保管されます。
また、公正証書遺言は家庭裁判所での検認が不要です。
公正証書遺言には、例えば次のようなメリットがあります。
① 公証人が関与する
遺言の作成に公証人が関与するため、自筆証書遺言とは作成方法が異なります。
② 原本が公証役場で保管される
自宅で保管する必要がなく、紛失などのリスクを抑えることができます。
③ 検認が不要
相続開始後、家庭裁判所での検認手続をする必要がありません。
④ 自分で保管する必要がない
「遺言書を作ったものの、どこに保管したかわからなくなってしまった」という事態を避けやすい点も特徴です。
公正証書遺言を作成する場合、一般的には次のような資料を準備します。
遺言者本人の印鑑登録証明書などが利用できます。
日本公証人連合会によれば、3か月以内に発行された印鑑登録証明書のほか、運転免許証、マイナンバーカードなどの顔写真付き本人確認資料を利用できる場合があります。
遺言者と相続人との続柄を確認するため、戸籍謄本や除籍謄本などが必要となる場合があります。
不動産を遺言の対象とする場合には、
などを準備します。
預貯金を遺言の対象とする場合には、通帳やそのコピーなどが必要となる場合があります。
公正証書遺言では証人2名が必要です。
自分で証人を手配する場合には、証人予定者の氏名・住所・生年月日などが確認できる資料を準備します。
ただし、誰でも証人になれるわけではありません。
例えば、未成年者や推定相続人、遺贈を受ける人などは証人になることができません。
適当な証人が見つからない場合には、公証役場に相談することもできます。
公正証書遺言の作成手数料は、遺言によって相続・遺贈される財産の価額などを基準として、公証人手数料令に基づいて計算されます。
重要なのは、単純に「遺産総額だけ」で一律に計算するわけではないということです。
日本公証人連合会によれば、相続人・受遺者ごとに、その人が受け取る財産の価額を計算し、それぞれの手数料を合算する方法が基本となります。
また、財産の総額が1億円以下の場合には、一定の条件のもとで1万3,000円の遺言加算があります。
さらに、公正証書原本の枚数が3枚を超える場合には、超える1枚ごとに300円が加算されます。
そのため、実際の金額については、財産の内容や誰にどの財産を相続させるのかによって変わります。
遺言書を作成するときは、単に「誰に財産を渡すか」だけを決めればよいわけではありません。
次のような点も整理しておくと、遺言の内容を考えやすくなります。
配偶者、子、その他の親族など、財産を誰に残したいのかを整理します。
不動産、預貯金、株式など、自分がどのような財産を所有しているのかを確認します。
特に不動産については、所在地や地番などを確認しておくことが重要です。
不動産が複数ある場合、
「長男には自宅」
「次男には別の土地」
など、具体的に分ける方法を検討することがあります。
不動産は現金のように簡単に分割できないため、相続後のトラブルを避ける観点からも、事前に考えておくことが大切です。
遺言の内容を実現するため、遺言執行者を指定することもできます。
誰を遺言執行者にするのかについても、遺言を作成する段階で検討しておくとよいでしょう。
遺言書の内容を誰に伝えるのかについても、考えておきたいポイントです。
遺言書そのものを見せるかどうかとは別に、
「遺言書を作成した」
「どこに保管している」
といった情報を家族に伝えておくことが、相続開始後の手続をスムーズにする場合もあります。
遺言書は、亡くなった後の財産について、自分の意思を残すための重要な方法です。
特に、
「子どもが複数いる」
「不動産を所有している」
「特定の人に財産を残したい」
「相続人以外の人にも財産を遺したい」
といった場合には、早めに検討しておく意味があります。
また、遺言書には複数の方式があり、
自筆証書遺言
法務局の自筆証書遺言書保管制度
公正証書遺言
など、それぞれ特徴があります。
「どの方法が自分に合っているのかわからない」という場合には、まず現在の家族構成や財産の状況を整理するところから始めてみるとよいでしょう。
遺言書は、単に書式に沿って作成するだけではなく、
「誰に何を残すのか」
「不動産をどのように分けるのか」
「相続が発生した後、実際に手続ができる内容になっているか」
など、将来の相続手続まで考えて内容を検討することが大切です。
わに司法書士事務所では、吹田市・千里山を中心に、相続・遺言に関するご相談をお受けしています。
「まだ具体的に決まっていない」
「何から考えればいいかわからない」
という段階でも構いません。
まずは現在のご家族の状況や財産について整理し、どのような準備が考えられるのか、一緒に確認していきましょう。
遺言書は、残された家族のためだけではなく、「自分の意思を残すため」の準備でもあります。
元気なうちに、一度考えてみてはいかがでしょうか。